西洋近代を問い直す(佐伯啓思)
半年前に読んだものをもう一度読み返した。
サブタイトルは「人間は進歩してきたのか」
痺れますね。
科学技術や市場経済の発展で、物質的には豊かになった現代社会において、本当に精神的に我々は進歩してきたのか?というのは私が普段から感じている疑問である。
こう感じるようになったのは何時ごろからであろうか?
13歳でモンゴルに行ったとき、11歳の遊牧民の子たちが羊を100匹ぐらいを馬に乗って先導していたのに、私は衝撃を受けた。
年下にも関わらず、颯爽と草原を駆け抜け、仕事をしている彼らがすごくかっこよく、自由に思えた。
毎日決まった時間に起きて、学校で授業を受け、友達とゲームをして寝る。
そんな日本の「普通」の中学生生活を送っていた私の目には、彼らの生活はとても魅力的に。映ったのだ。
毎日朝から晩まであくせく働く日本人は本当に幸せなのだろうか?
決まった時間に学校に行き、何時間も授業を強いる義務教育は正しいのだろうか?
こうした経験を経て、次第に私は「文明は我々を進歩させたのか?」という疑問を抱くようになった。
佐伯先生の今回の「人間は進歩してきたのか」という問いは日頃こうした疑問を抱いていた私と重なる部分を感じ、手に取った。
文明がもたらした多くの問題、例えばグローバル経済危機、国際関係に翻弄される環境問題、生の意味が希薄化して衝動的な犯罪に走る少年事件、AI台頭による人間の職の減少など。。
これらの問題を生み出している根底にあるものは何なのか?
この問いに対して著者は
「これらの問題には基本的に共通性があり、それは、我々が我々の生や生活の枠組に対して確かな意味づけが出来なくなっている」ということだ、としている。
思想的、歴史的な展望を持って、ある「視座」を捉えることこそが大切なのだ。
「自由」と「秩序」の観念を巡る争いの中で格闘を続けた近代の偉大な思想家を読み解くことで、現代文明の本質を探ろうという試みは非常に興味深かった。